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「キッチンな人」の日常

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建築条件付の土地に立てられた新築住宅。建物の設計施工の会社は決まっているが、住まいに対してこだわりを持つクライアントは、随所に要望をかなえるべく努力されている。とりわけキッチンに関しての意識は強く持ってはいるものの、当初のプランに疑問を感じつつも、ご自分達では手に負えないと、依頼された。提示された要望は「この家の中で孤立することなく、しかも舞台的な存在となること」ということだけ。ゴミ箱の置き場やアイロンをかける場所の確保などの細かい要望はもちろんあるが、『舞台』というキーワードが話の中心となる。
当初デベロッパーの設計したプランだと、動線に無駄が多く、そのため、キッチンに割り当てられる面積が小さくなっていた。そこで、まず動線と、キッチンの奥に位置するサニタリーの配置を整理することにより、大容量のパントリーを確保することができた。中庭に面した窓にはカウンターを設け、アイロンをかける場所を設けるが、中庭を見ながらの食事や、夜に夫婦で酒を飲んだりと、多目的に利用できる便利なカウンターとなった。このカウンターは、窓台と一体化することにより、キッチンとキッチン以外の部分との調和を図るための緩衝材としてもその一役を担っている。
赤松フローリングなど、ナチュラルな内装には、大理石や御影石などの豪華な素材や人工大理石といった人工的な素材は不釣り合いだと判断し、ステンレスを提案する。しかも見付80mmの板を3枚とすることで、『舞台性』を意識した。その3枚のステンレスの水平感をより強調するために、扉の素材をゼブラウッドの木目を横方向に施した。キッチン側に回ってもアルミアングルを加工した手掛けを通すことで、その横長感は継続している。
天板の80mmは、見た目の重厚感ということだけでなく、シンクとガスコンロの段差をスムーズに納めるための工夫でもある。

2階に上がる階段踊り場からの俯瞰はまた新鮮で、この住宅におけるキッチンの存在をよりいっそう表している。

この住宅では、水盤やガラスの鉢が随所に置かれ、色鮮やかな金魚が緩やかな泳ぎを見せ、時間の流れをよりゆっくりとさせているようである。引っ越し早々は体調を崩しあまり動かないという金魚も、この家では初日から、あたかも、ずっとそこにいるように揺らいでいた。

 

photo by koushi tarumi